「彗星。COMET 太陽系を構成する天体のひとつで、希薄なガスに包まれ、ときには長い尾を引いて、ほうきの形に見え〈ほうきぼし〉とも呼ばれる。すいせいのように…≠ニは、優れた人物がその社会に突然あらわれる時に使われる表現である―」
「彗星物語」は、私が初めて読んだ宮本輝さんの小説です。
まだ加藤健一事務所の養成所にいた頃に、先輩が宮本輝が大好きだと言っていたのを聞いて、家の本棚を探してみると、この「彗星物語」という本があったのです。(私の家は母親が本が好きで、本棚だけは立派なものがあり、いろいろな本が置いてあります)
私はこの「彗星物語」という本を読んで、笑いました、怒りました、泣きました、哀しみました。ありとあらゆる感情が解放され、溢れ出しました。読み終わった後には、深いため息と、「おもしろかったなぁ」という独り言、そしてなんとも言えぬ幸福感が私を包みました。
もう少し詳しく説明すると、深いため息は、この素晴らしい物語を読み終わってしまった寂しさと、なんでもっと早く読まなかったのかという悔しさ。
「おもしろかったなぁ」という独り言は、読み終わった後の素直な感想。
そして、なんとも言えぬ幸福感は、この「彗星物語」の底にある暖かさ。その暖かさに私はつつまれました。
本の内容を書かないで私の感じた事ばかり書いているので、みなさんは「なんのこっちゃ」と思うでしょうが勘弁してください。
とにかくこの「彗星物語」という本と宮本輝さんとの出会いは、私にとってまさに突如彗星の如くあらわれたという感じで、今も私の心のど真ん中で輝いています。